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「速水さん、起きて大丈夫なんですか?」
「えっ」と速水さんの眉が寄る。
「だって、熱があるんでしょ? 会社をお休みする程、具合が悪いんでしょ?」
次の瞬間、速水さんが「ああ」とハスキーな声で口にし、それからクスッと笑う。
「熱はないから大丈夫だよ。どうぞ」
速水さんがスリッパを出してくれて、中に入るように勧めてくれた。
「ちょっと今日は散らかっているけど」
廊下の先のドアを開けると広々としたリビングがある。昨日と違って広いテーブルの上に書類の束が山のように積まれ、その脇にはノートパソコンが置かれていた。
お仕事をしていた雰囲気……。
速水さん、寝込んでいたんじゃないの?
「美樹ちゃん、コーヒーでいい?」
キッチンから普段よりハスキーな速水さんの声がかかる。
「お構いなく。あの、いろいろ買って来たんです」
速水さんの傍に行き、キッチンカウンターの上にレジ袋を置く。
「えーと、これは風邪薬で、これは栄養ドリンク、それからのど飴に、スポーツドリンク。あと、お粥の材料です」
カウンターの上に出した品物を見て速水さんが目を丸くする。
「もしかして、寝込んでいると思った?」
「……はい。あの、体調は大丈夫なんですか?」
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