220人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
ドキドキしながら速水さんと歩いた。
高級感あるグレーに包まれた8階建てのマンションが速水さんのお家だった。オートロックの正面玄関を通って、突き当りのエレベーターに速水さんと乗った。
「部屋は3階だから」
速水さんが階数ボタンを押して扉が閉まる。ぐーんとエレベーターが上昇する。あっという間に3階に到着。
廊下を少し歩いて、速水さんがドアの前で止まる。サッとカードキーをセンサー部分にかざすと、ロックが外れる音がした。
レジ袋を持ちながら、さりげなくカードキーをかざす速水さんの姿がスマートで、カッコ良すぎる。今、絶対、写真を撮る所だった。私のバカ。なぜスマホを取り出さなかったの!
ドアの前で激しく後悔していたら、「どうぞ」と速水さんに言われて、慌てて中に入る。
入った瞬間、爽やかな香りがする。玄関の芳香剤の香りかな。いくちゃんの所よりも玄関が広い。シューズクローゼットが大きい。もしかしてご家族と暮らしているの?
「あ、一人暮らしだから」
ご家族の気配をうかがっていたら速水さんに言われた。
「お一人なんですか。広いですね」
「ここ家族向けだから、収納が多く作ってあるんだ」
「家族向けなんですか。もしかしてご結婚のご予定が?」
速水さんがぷっと笑った。
「ないよ。予定があったら美樹ちゃんを部屋に上げないよ」
うん? どういう意味だろう?
首を傾げていると、私の前に速水さんがグレーのスリッパを置いてくれた。
「使って」
「はい。お邪魔します」
靴を脱いで、スリッパに足を入れる。
廊下を歩く速水さんの後ろを歩いた。
最初のコメントを投稿しよう!