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次の木曜日、いくちゃんと図書館でハヤミさんを待つ。ハヤミさんは午後6時頃に来た。
「あれがハヤミさん?」
カウンター前に立つスーツ姿のハヤミさんをいくちゃんが見る。
またお姿を拝見できるなんて幸せ過ぎる。
「うん。イケメンでしょ?」
「整った顔立ちではあるけど、なんか怖そう」
「怖そう?」
「もっと優しい感じの人かと思ってた。スーツ姿は長身だからカッコイイけどね」
「でしょ、でしょ! ハヤミさんってスーツ姿がいいんだよね」
今日のグレーのスーツも素敵でよく似合っている。
「ハヤミくん、お待たせ」
カウンターから紺色のエプロンの女性が出て来た。
ゆりさんって人だ。
「うわっ、あの人美人!」
ハヤミさんよりもゆりさんの方にいくちゃんが食いついた。
「あっ、ハヤミさんが微笑んだ。笑うと素敵ね」
いくちゃんが言った通り、ゆりさんと向かい合ったハヤミさんが微笑んだ。物凄く優しい表情になる。
「いい雰囲気の二人だね。美男美女って感じで」
確かに美男美女。
ゆりさんに向かって砕けた表情を浮かべるハヤミさんを見て、急に胸の中がモヤモヤとし出す。
2人はどういう関係なんだろう?
もしかして、ゆりさんはハヤミさんの片思いの相手?
いや、そんな訳ない。
ゆりさんはお子さんがいて、結婚しているような話をこの間していたし。
でも、結婚しているからこそ、言えない想いがあったりするのかな。毎週図書館に来るのって、まさかゆりさんに会う為?
そう思った時、ピンと来てしまった。
胸が張り裂けそうになる。
今日こそはハヤミさんにお礼を言おうと思ったけど、無理。もうそんな勇気ない。
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