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「卯月先生ですよね?」
顔を上げてびっくり。
目の前にハヤミさんが立っている。
えー! なんじゃこりゃー!
ついに幻覚を見るようになったのか!
「メールを差し上げた、速水です」
名刺には『速水文人』と立派なお名前が書いてある。
ハヤミさんは、早見でもなく、早水でもなく、『速水』と書くんだ。その漢字、全く想像してなかった。
美内すずえ先生の『ガラスの仮面』に出てくる紫の薔薇の人と同じ速水だったなんて……。
いや、今は紫の薔薇の人の事は置いておいて。
お、落ち着け、私。
速水さんにとって私は初対面の人間で、私が推し活(速水さんを見守る活動)をしている事は知らないはず。
言葉を交わすのは今日が初めて。
ちゃんと名乗らなきゃ。
「あの……う、卯月でしゅ」
うぎゃ、噛んだ。
恥ずかしい。
もう帰りたい。
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