1話 出会い

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「卯月先生ですよね?」 顔を上げてびっくり。 目の前にハヤミさんが立っている。 えー! なんじゃこりゃー! ついに幻覚を見るようになったのか! 「メールを差し上げた、速水です」 名刺には『速水文人(あやと)』と立派なお名前が書いてある。 ハヤミさんは、早見でもなく、早水でもなく、『速水』と書くんだ。その漢字、全く想像してなかった。 美内すずえ先生の『ガラスの仮面』に出てくる紫の薔薇の人と同じ速水だったなんて……。 いや、今は紫の薔薇の人の事は置いておいて。 お、落ち着け、私。 速水さんにとって私は初対面の人間で、私が推し活(速水さんを見守る活動)をしている事は知らないはず。 言葉を交わすのは今日が初めて。 ちゃんと名乗らなきゃ。 「あの……う、卯月でしゅ」 うぎゃ、噛んだ。 恥ずかしい。 もう帰りたい。
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