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8話 タクヤ君のスキャンダル
速水さんと会った次の日、大学に行く為に電車に乗った。
熱愛記事の事でタクヤ君と速水さんに用心した方がいいと言われて、帽子、眼鏡、マスクで顔を隠すけど、怪しさが増して目立っている気がする。
「美樹、おはよう!」
つり革に掴まっていたら後ろから声がした。
振り向くといくちゃんだった。
「どうしたの? そのダサダサの毛糸の帽子」
いくちゃんが私の帽子をつんつんする。
「いくちゃん、なんで私だって気づいたの?」
ぷっといくちゃんが笑う。
「わかるよ。どこからどう見ても美樹だもん」
変装しているのがバカらしくなった。帽子はやめよう。
毛糸の帽子を取るといくちゃんが笑う。
「美樹、髪の毛、帽子かぶっていたからクセがついてる」
車窓に映る自分の姿を見ると、髪の毛がぺちゃんこに潰れていて、みすぼらしい。
いくちゃんに変装バレるし、髪の毛は潰れるし、朝から私は何をやっているんだろう。
もうタクヤ君の熱愛記事を気にするのはやめた。どうせ誰も私に気づく訳ない。
そう思った時、どんっと誰かに突き飛ばされた。
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