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「美樹、大丈夫?」
よろけた私をいくちゃんが支えてくれる。
ぶつかった人を見ると、大学の女の子だった。確か、高木さん。同じ学部の同じ学年の人で、お洒落女子グループの人だ。
「ちょっと、ごめんぐらい言いなよ」
いくちゃんが私の代わりに言ってくれる。
「内田さん、小さいから気づかなかったの」
高木さんがぷいっと背を向けて、停まった電車から降りる。大学最寄り駅だった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
いくちゃんが高木さんを追いかけて電車から降りる。私も降りた。
「ぶつかといって、その態度は何?」
ホームの真ん中で高木さんをいくちゃんが捕まえた。ホームには人が沢山いて、みんな何事か私たちの方に視線を向けている。
「なんで島田さんに言われなきゃいけないの? 謝って欲しいなら内田さんが自分で言うべきでしょ?」
高木さんに睨まれた。高木さんはいくちゃんよりも背が高い。噂によると170㎝はあるらしい。154㎝の私なんて、高木さんから見たら小人だ。
でも、言う事は言わなきゃ。
高木さんは失礼だ。
拳をぎゅっと握って高木さんを見る。
「あ、あの……」
「何よ」
「痛かったです。謝って下さい」
「はあ? それはこっちのセリフよ。あんたみたいなちんちくりんがなんでタクヤ君と熱愛なのよ! なんでタクヤ君とツーショット写真撮ってるのよ!」
高木さんの悔しそうな声がホームに響いた。その瞬間、ホームにいる人たちから肌を突きさすような視線を感じる。
まさかタクヤ君の事を言われるとは思わなかったからびっくり。
「えーと、そ、それは……」
どうしよう。みんなが見ている。
タクヤ君と知り合いだと言ったらさらに炎上しそう。
「美樹、こっち」
いくちゃんが私の腕を引っ張って走り出した。
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