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「えー! 熱愛記事が出たの!」
いくちゃんが目を見開いた。それからスマホを取り出してすぐに検索し始める。
「あっ、これだ。美樹の顔はぼかしてあるけど、美樹の事を知っている人が見たら気づくかもね。だから、毛糸の帽子を被っていたのか」
納得したようにいくちゃんが頷いた。
「えっ、私だってわかる?」
「うん。勘のいい子なら気づくんじゃない」
いくちゃんがスマホをこっちに向ける。画面には私とタクヤ君のツーショット。私の顔はぼかされていて、改めて見ると犯罪者みたい。
それに、顔がぼかされているのに私っぽい雰囲気がある。確かに私を知っている人が見れば気づくかも。そう思った時、お母さんとお兄ちゃんの顔が浮かんだ。
今朝、家を出る時は何も言われなかったけど、今頃、気づいていたりして……。
お母さんは喜びそう。お兄ちゃんは怒るかも……。
芸能人と繋がりがあると知ったら騙されているんだと言われそう。
いくちゃんのスマホ画面に突然、『芳くん』と表示された。
わっ、お兄ちゃんから電話!
ど、ど、どうしよう……。
「あ、芳くんだ。もしもし」
えー! いくちゃん、お兄ちゃんの電話に出るの!
「美樹の居場所?」
いくちゃんが私を見る。顔の前で手を振って知られたくない事を身振りで伝えたつもりだったけど、いくちゃんは「一緒にいるよ」と言ってしまった。
しかも、「芳くんが話したいって」と言って、私に通話中のスマホを渡した。
覚悟を決めて、スマホを耳にあて「お兄ちゃん」と話すと怒鳴り声が返って来た。
『美樹! 橋本卓也と熱愛ってどういう事だ!』
お兄ちゃん、ネットの記事見ちゃったんだ……。
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