259人が本棚に入れています
本棚に追加
お兄ちゃんが私を心配するようになったのは、私が小2の時、男子三人組にいじめられていたのを目撃してからだ。
チビで人に上手く自分の気持ちが伝えられなかった私は、クラスに馴染めず、どこか浮いた子だった。ある日、なんの考えもなくピンクのフリフリの服を学校に着て行ったら、『チビピンク』『ピンクブス』と男子にからかわれるようになった。それから毎日のように男子に追いかけ回され、物を取られたり、悪口を言われたりした。
その日も放課後、帰ろうとした時、男子にお気に入りの下敷きを奪われ困っていた。
そんな所を小六のお兄ちゃんが通りかかり、私をいじめた男子三人組を成敗してくれた訳だ。昔から背の高かったお兄ちゃんは小六でもう170㎝近くあり、小2の男子が敵うはずもなかった。
お兄ちゃんのおかげでいじめられる事はなくなったが、それ以来、お兄ちゃんはかなりの心配症になった。
さすがにそろそろほっといて欲しいと思うのだけど……。
『美樹、聞いているのか! 橋本卓也と写っているのはお前だろ?』
「えーと、いろいろあってそんな事になってしまって……」
『いろいろってなんだ』
「いろいろはいろいろだよ」
タクヤ君と知り合った経緯を話すには速水さんの事に触れなければいけない。私がお兄ちゃんより年上の男性と付き合いがあると知ったら、速水さんに会わせろとしつこく言うに決まっている。それで速水さんに会わせたら、きっと速水さんに失礼な事を言う。速水さんとやっとお友だちになれたのに、お兄ちゃんのせいで速水さんとの関係が壊れたら困る。だからお兄ちゃんに速水さんの事は言いたくない。
『集学館の編集者の……何て言ったかな。そうだ。速水だ! そいつと関係があるんだろう?』
心臓が飛び出そうな程、驚いた。なんでお兄ちゃん、速水さんの事知っているの?
最初のコメントを投稿しよう!