8話 タクヤ君のスキャンダル

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集学館に行くと受付の人に捕まった。 「どういったご用件でしょうか?」 マネキンのようなほっそりとした美人がじっとこちらを見る。 「えーと、文芸部の速水さんに用事がありまして」 そう言いながら、リュックに手を突っ込み、速水さんに頂いた名刺を探す。 確か内ポケットのケースの中にしまってあったはず……。 あった! ケースを取り出して、大事に仕舞ってあった速水さんの名刺を受付の人に見せる。 「アポはございますか?」 「アポはありませんが、急用なんです。取り次いで頂けないでしょうか?」 「少々お待ち下さい」と言って、受付の人が電話してくれる。 そして一分後。 受話器を置くと受付の人は私に向かって微笑みながら口を開いた。 「速水は社にいないそうです」 「えっ!」 速水さんがいないとは思ってもみなかった。 「あの、どちらに行けば会えるんでしょうか?」 「申し訳ありませんが、そこまではこちらでもわかりません」 「速水さんの部署に人に聞けばわかるのでは?」 「部署の者もわからないと言っていました。お引き取り下さい」 ニコッと微笑んだ受付の人の顔から強い圧力を感じて、これ以上質問できなかった。 仕方なく、集学館を出た。
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