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次のアルバイトはいくちゃんに紹介してもらったクレジットカード会社で、顧客情報をパソコンに入力する仕事だった。
クレジットカード会社はオフィスビルの10階に入っていて、中に入るには社員証が必要だった。不特定多数が訪れる書店と違って中に入れる人が限られているから、ハヤミさんに会える可能性が全くない。もうハヤミさんが来るかもと、そわそわする事なく仕事に集中できる。
ハヤミさんの事を考え過ぎて、大学の単位を何個か落としたから、そろそろしっかりしなければいけなかった。
うちはごく普通のサラリーマン家庭で、一人暮らしをして、仕送りをしてもらう余裕はないから実家から一時間かけて都内の大学に通っている。それでもバカ高い学費を出してもらってありがたい。だから、四年で卒業できなければ親不孝になる。
心を入れ替え、大学にも真面目に通い、新しいアルバイトも頑張った。
ハヤミさんの事は少しずつ考えないようになった。
やっとハヤミさんを忘れられる。
あの日まではそう信じていた。
データ入力のアルバイトを始めて一ヶ月が経った頃、オフィスビル前でハヤミさんらしき人を見た。
前から歩いて来たハヤミさんの精悍な顔を見た時、心臓が直接、雷に打たれたようだった。
たった一度しか会った事がないのに、ハヤミさんだと確信した。
これからバイトだったけど、追いかけなければ後悔すると思った。
すれ違ったハヤミさんの後ろ姿を追いかけた。
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