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「コーディネート? なんであたしが」
「能勢さんは、高校生にしてファッションモデルをやったことがあると聞きました」
あ。そういえばそんなこともあったっけ。
母がティーンズ向けのファッション誌を担当していて、そのコネでたまたま数回モデルとして誌面に載ったのだ。
おしゃれするのは好きだけど、それは単なる趣味。オーディションで合格したわけでもなければ、街頭でスカウトされたわけでもない。つまりあたしの実力じゃない。
でもそんな事情など知りもしない荻野くんは、この機を逃してなるものかとしゃべり続ける。
「おれ、一組の夏生さんに告白したいんです。部活が同じで……あ、天文部なんですけど。ついこの間の夏合宿で、好きかもしれないって気付いて。もしOKもらえたらデートに誘いたいんです。
でも自分、友達からよく私服がダサいって言われてて、このままじゃダメだって」
「友達ってあれでしょ? よく一緒につるんでる……」
ぼんやり想起した荻野くんのお友達の顔。
顔で判断しちゃいけないけど、正直彼らだってそこまでファッションに精通しているとは思えない。でもその友をしてダサいと言わしめる荻野くんはどれほどなのか。
ちょっと興味が湧いてしまう。
「ふうん。ま、いいんじゃない。そういう前向きな理由なら、協力してあげないこともない」
「能勢さん……! ありがとうございます」
飛び上がって土下座しそうな勢いの荻野くんを前に、親友の美弥だけが「市夏、本気……?」とあたしの心配をしていた。
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