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ショッピングモールを出ると、夕暮れどきの淡い空色が広がってた。
この季節、日の高いうちはまだ暑いけど夕方になれば途端に涼しくなる。
荻野くんのために選んだ服は、暑ければ上着を脱げばいいし、寒ければ着込めばいい。
夏の終わりにぴったりなコーディネートだった。
ピリッとつま先に痛みが走る。
今日はかかとの高い靴を履いてきたし、休まず歩きまわったから疲れてしまった。
ちらりと荻野くんの肩口に目をやると、ちょうど彼もこちらを見たところだった。
「能勢さん、良かったらどこかで休みませんか」
「え?」
「ほら、ちょうどそこにカフェあるし。能勢さんのおかげで、今日は予算内におさまったんです。だから……お礼におごらせてください」
なんだそれ。
荻野くん、あたしをエスコートするつもり?
見た目が変わって、性格まで変わってしまったんだろうか。
なんて思ったけど、よく見たらそんなに暑くないのに荻野くんは額に汗をかいていた。
やっぱり、気を遣ってちょっと慣れないことを申し出てくれていたみたい。
彼のことだからきっと、あたしが足を痛めたことにまで気がまわったわけじゃないんだろう。本当にただのお礼のつもり。なんかもうそれでもいいやと思った。
このままでは離れがたい気がして、あたしはカフェで休むことを承諾したのだった。
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