赤錆を 撫でて擦すって 黒錆へ

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赤錆を 撫でて擦すって 黒錆へ

cbb39729-edf4-4acb-bd5d-75fdc6c833bd   赤錆(あかさび)を 撫でて擦すって 黒錆(くろさび)へ  ねえねえ、じゅうり~。この錆びたの なあに?  (なた)だよ。大人の手首くらいの太さの木や枝を、いっぺんでバッサリ切れるよ。刃の長さは20センチくらいだね。  茶色のテープ貼ってあるとこが 刃なの?  そうだよ。刃は、髪の毛が切れるよ。鋭いから危険防止に、使わないときはテープを貼っておくんだ。  刃じゃない側が銀色と黒のブチになってるね。どうしてなの?  100年以上前に作られた鉈だよ。「赤錆」だらけだったから、錆を落して研いで切れるようにして、柄も入れ換えたんだ。  黒いのは「黒錆」だよ。  ええっ?赤錆と黒錆があるの?  そうだよ。鉄は錆びると 赤錆と黒錆の 二種類の錆になるんだ。化学的には 赤錆は 酸化第二鉄(Fe2O3)、黒錆は 四酸化三鉄(四三酸化鉄Fe3O4)だよ。  ふだん良く見る鉄の錆は赤錆だよ。鉄の中華鍋や拳銃の黒いのは黒錆だよ。  赤錆ができると本体の鉄がどんどん錆びて、最後は本体が赤錆になるんだ。  黒錆ができると、黒錆は強力な保護膜になって、それ以上 鉄が錆びるのを防いで、鉄自体を保護するんだ。  その鉈の 黒い所は黒錆だよ。黒錆にするには 赤錆を落すように赤錆の部分を何度もくりかえして擦るんだ。すると鉄と空気中の酸素が反応して黒錆になるよ。他にも、加熱して空気中の酸素と反応させる方法があるけど、刃物にそれをすると 刃の焼きが戻って切れなくなるよ。  じゅうりが金槌の赤錆を落していたのは、黒錆にするためだったんだね~。  金槌を見るかい。あの赤錆が、今はこんな黒くなってる。もうこれ以上錆びないよ。  スゴイね~。おもしろいね~。  昔の人は黒錆の性質を知ってたから、赤錆が出ると、刃物を長持ちさせるため、布で拭いて擦って黒錆にしてたんだね。そして黒錆ができる金属を(くろがね)と言ったんだよ。  赤より黒がいいんだね。  トラの赤と クロの黒とはちがうよ。  あはっ!おいらの考え、お見通しだね!     
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