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ヤスシ
きっかけは2021年の年末の電話だった。
「…そうだ、おい?」
仕事から帰宅した俺に親父か話しかけてきた。
親父はリビングのテーブルに座っていた。 それに対し、母親が親父への不満の言葉を投げつけていた。親子は嫌がり、わざとテレビ画面を眺めていた。いつもの事だ。
俺は玄関からリビングの横をそそくさと通ろうとした。
すると、その父親が急に俺に向かって声をかけた。
二階の自室へ行こうとしていた俺は足を止めた。
「な、なんだよ?」
「今日の昼間、ヤスシ君から電話あったぞ?」
「ヤ、ヤスシ?」
近所に住む俺の幼なじみだ。小学校から高校まで一緒だった。前に会ったのは、もう5年も前か。
「な、何の、の、用だよ?」
「さあな。『居ないよ』って言ったら『なら、いいですよ』とか言って切られたぞ」
何だろう。ヤスシは俺の携帯番号を知っているはずだ。俺の携帯に直後連絡してくれば良いだが。何の用だろうか。しかも自宅に電話とは。
「…そんなことより、アンタねぇ…」
母親のお小言は止まらない。今度は俺に向いてきた。
俺は二階の自室に急いで上がった。
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