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夏休みも終わりに近づいた頃、今日は花火大会だ。この地区では、毎年のように花火大会が行われていた。だが、2019年の暮れに中国の武漢で発生した新型コロナウィルスが状況を一変させた。翌年、日本でも流行して、日本は先の見えないウィルスとの戦いになった。日常でマスクが欠かせなくなり、リモートワーク、テレワークが流行した。そして2021年に新型コロナウィルスのワクチンの接種が始まると、新型コロナウィルスは収束すると思われた。だが、収束はせず、流行し続けた。そのたびに、緊急事態宣言などが出され、外出が制限された。飲食店は営業時間短縮により赤字になり、中には閉店する店も出たという。
その影響で、世界中の様々なイベントが中止に、あるいは延期になった。日本でも多くのイベントが中止、あるいは延期になった。特に印象に残っているのは、東京五輪だ。2013年に決まって以降、誰もが楽しみにしていた。そして、東京五輪に向かって東京は変わろうとしていた。だが、新型コロナウィルスの流行によって、東京五輪は1年先に延期になった。2021年に1年遅れで行われた時は、多くの人が喜んだ。だが、中には中止すべきだという人もいて、国立競技場の近くなどで抗議をしていたという。
2022年になると、徐々に収まり始め、元の日常が戻ってきたように見える。だが、花火大会は多くが中止。まだまだ人が大量に集まる場所では危ないからだろう。次第にイベントで大量に人が集まり、賑やかさが戻ってきた。海外からの観光客も徐々に増えてきた。
だが、2023年にもなると、マスクの着用が任意になり、新型コロナウィルスへの恐怖も和らいできた。そして、各地で再び花火大会が行われるようになった。
卓也(たくや)と剛志(たけし)、花子(はなこ)、真理恵(まりえ)は幼馴染。今でも同じ街で暮らしている。今日は4年ぶりの花火大会。思う存分楽しもう。
4人は歩いて会場に向かっていた。すでに会場付近の道路は大量の人が歩いている。これもいつもの花火大会の光景だ。とても懐かしい。
「4年ぶりの花火大会か」
「楽しみだね」
4人は浴衣を着て、街を歩いている。みんな楽しそうだ。こんな光景が再び戻ってくるなんて、信じられなかった。もう戻ってこないと思っていた。だが、戻ってきた。
「ああ。コロナで中止になった時は、再びやるのはいつだろうと思ってしまったよ」
と、花子は剛志に聞いた。あれから、剛志はどうしていたんだろう。とても気になる。
「あの間、大丈夫だった?」
「大丈夫だったけど、マスクが手放せないんだよ。それに、何度ワクチンを打てば防げるんだろうって心配で」
剛志は4回ワクチンを打った。ワクチンの副作用で、数回寝込んだけど、すぐに治った。だが、1年ぐらい全くしていない。徐々に怖くなくなってきたからだろうか? 全くわからない。
「私もそうだった。けど、やっと元の世界が戻ってきたようだね」
「うん。やっと花火が見られるってだけで嬉しいよ」
卓也は久しぶりに見れる花火大会に興奮していた。今年はどんな花火が見られるんだろう。楽しみだな。
「みんなも楽しいでしょ?」
「うん。こうしてみんなで花火を見れるだけで、幸せ」
花子と真理恵もワクワクしていた。4年も見ていなかった。もう見られないんじゃないかと思った。だけど、またみられることができた。再び元の日常は戻ってくる。そう信じていてよかった。
「卓也は元気にしてた?」
「うん」
花子は安心した。長い間、会えなかった。その間、花子は心配だった。今頃、どうしているんだろう。新型コロナウィルスに感染していないだろうか?
「真理恵はどうだった? 全く会えなくて寂しかったでしょ?」
「うん。でも、こうして再び会えて、嬉しいわ」
真理恵はこの近くの中学校で教員をしていて、日々子供たちに教えている。流行し出した頃には、全く学校に行けずに、自宅で宿題をするばかりだった。ようやく学校は再開されたけど、透明なビニールで覆われるなど、異様な風景だったという。
「ワクチンができて変異株ができて、またワクチンができても変異株がでて、まるでいたちごっこで、もう元の生活は戻らないと思ってた。でも、やっと元の生活が戻ってきて、嬉しいわ」
真理恵は気にしていた。ワクチンができるたびに次々と変異種が現れ、また対策を取らなければならない。まるでいたちごっこのようで、それは先の見えない闇のようだった。だが、ようやく終わりが見えて、ほっとした。
「その気持ち、わかるよ」
「ああ」
花子は真理恵の肩を叩いた。真理恵は少し笑みを浮かべた。
「今、どうしてるの?」
「相変わらず会社員やってるよ。でも、その間はリモートワーク、テレワークもあったけど、今は平常に戻ってるよ」
剛志は相変わらず会社員をやっているようだ。だが、そんな会社も、新型コロナウィルスの影響でいろんな事が変わった。時差通勤、リモートワーク、テレワークで、なかなかみんなに会える日が少なくなった。だけど、やっと元の日常が戻ってきた。これから日本は再び復興への道を進んでいくんだろうか?
「よかった! やっと会社にも日常が戻って来たんだね」
「もう戻ってこないんじゃないかと思ったけど、やっと日常が戻ってきてよかったよ」
剛志はほっとした。もういつもの日常は戻ってこないんじゃないかと思った。だが、元の会社に戻った。やっぱり仕事はこうじゃないと。
「嬉しいでしょ?」
「うん」
と、花子は気になった。卓也は今、何をしているんだろう。卓也の動向も全く知らない。
「卓也くんはどう?」
「教員をしてるんだけど、2020年の春はなかなか授業ができなくて、寂しかったよ。再開はしたんだけど、アクリル板があったりで雰囲気が悪かったんだ」
真理恵同様、卓也も苦しんでいるんだな。コロナ禍の苦しみは、みんな一緒なんだ。だけど、日常が戻ってきて、よかったね。
「確かにその気持ち、わかる! いつもと違う雰囲気だもんね」
「でも、やっと普通の学校に戻って、よかったよ」
気が付くと、もうすぐ花火会場だ。花火会場には、すでに多くの人々が集まっている。彼らはみんな、楽しそうだ。4年ぶりで、嬉しさも大きいだろう。
「さぁ、もうすぐ花火会場だ」
「楽しみだなー」
4人は空を見上げた。だが、まだ打ち上げ花火は上がっていない。会場では多くの人が打ち上げ花火を待っている。
「これが花火大会か。毎年見てたのに、なぜか今年は新鮮だね。4年間、全く行ってなかったからだろう。今日は思いっきり楽しもう!」
「うん! 4年ぶりだもんね」
剛志は辺りを見渡した。みんな楽しそうな表情だ。
「みんな楽しそうだね」
「みんな、どんな思いでコロナ禍の日々を送ったんだろう」
卓也は彼らの事を考えた。どんな思いでコロナ禍を過ごしたんだろう。寂しかっただろうか?苦しかっただろうか?
「きっと寂しかったんだろうな。みんなに会えなくて、なかなか外に出れなくて」
「でも、やっといつもの日常が戻ってきて、よかったと思ってるだろうね」
と、辺りが騒がしくなった。いよいよ花火大会が始まるようだ。4人はワクワクしてきた。
「あっ、もうすぐ打ち上げ花火だよ」
「見よう見よう!」
そして、花火大会が始まった。夜空に大きな音を立てて花火が打ち上がる。やって来た人々はその様子を楽しそうに見ている。これが僕たちが待っていた、いつもの日常だ。
「きれいだね」
「たーまやー!」
4人は打ち上げ花火に感動した。こんな風景が毎年見られた。だけど、4年ぶりの開催で、いつもとは違った感動がある。
「これが待っていた景色なんだね」
「みんな、感動してる」
花子は辺りを見渡した。周りの人々もみんな喜んでいる。やっぱり花火はいいもんだ。
「4年ぶりだから、感動も例年以上だね。やっぱり、花火って、いいもんだな」
「うん」
やっと戻った日常。そんな日々が永遠に続きますように。
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