義父の呼び出し

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義父の呼び出し

 会社に戻ると義父から呼び出しがかかった。  義父とは同じ会社に勤めている。  これは全くの偶然で、専務という責任ある役職の彼が私を特別気にかけることはない。というか嫁だからといって心配されるようでは私の仕事の姿勢が問題ということになる。  しかしこのタイミングで呼び出されたということは、要件は先ほどの会社に乗り込んできた女のこと以外にない。  おそらくあんな女が会社に押しかけたら、私でなくとも事実確認が入るのは当然だろう。  どう考えても私的な目的と思われたので、その対応に私の直接の上司ではなく、縁戚である義父が入ってくれたのだと思う。  応接室で向かい合うと、私はあらいざらい素直に話した。 「…うちの愚息のせいで、本っ当っにっ、ミナミさんに迷惑かけて申し訳ない!」  ソファに座っていながら土下座レベルに頭を下げてくれる義父の顔を慌てて上げさせる。 「お義父さんが悪いわけではありません!…その、前からカイさんが浮気してる気はしてました。…家事もおざなりで…レオにとってももう…よくないんじゃないかと」  家庭の役割上、今年小学校に上がったばかりの息子はずっとお父さん子だと思っていたが、その彼の様子が最近少しおかしいのだ。  そのことも話すと孫溺愛の義父は眉間の皺を深くする。  社長と血縁でもなく実力で現在の地位を得ただろう義父は、優男風の夫とは似ても似つかない精悍な顔立ちをしており、その鋭い眼光を向けられると誰もがヒヤリとする。  まあ孫をかわいがる優しい顔を知っていれば仕事に誠実な男の顔なのだが。  しばらく考えた後、義父は口を開いた。 「ミナミさん、興信所を入れよう。弁護士もだ。金は俺が出す」 「そ、そこまでしていただくわけには…」 「いや、迷惑をかけたのはうちだ。息子にはしかるべき償いをさせなければならない。君にも、レオにも。」  弁護士は元々考えていたし、これから探すことを思えば義父の申し出は渡りに船だった。ありがたく頭を下げる。 「本当に申し訳ありません。ありがとうございます。助かります!」 「君は息子の嫁だが、うちの大事な社員でもある。悪いようにはしない。大変だと思うが頑張ろう」 「はい!」  実力はもちろん人柄も申し分ない義父、本当にどうしてこの親からあの男が生まれたのだろう。
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