4人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、商家の若旦那に召集令状が届いた。大旦那や使用人たちはどんな騒ぎを起こすのか。
若旦那:ついに俺の所へ召集令状が届いたぜ
番頭:そいつは目出度いことで
大旦那、ここは一つ盛大に出征祝いを開きましょう
大旦那:いい考えだ。祝いの席には何がふさわしい
使用人1:おいらはビフテキがいいなあ
大旦那:ばかもの。贅沢すぎるわ。贅沢は敵だ
使用人2:それではトンカツは
大旦那:いい考えだ。トンカツは若旦那が敵に勝つって意味で食べて
よい
使用人3:俺は飯よりも酒が飲みたい
使用人1:もう買ってありますぜ
大旦那:いくつ買った
使用人1:二本買った
え、オチが分からない。
いいのさ、オチなんて分からねえほうが平和だ。
どうしても教えてもらわにゃ気になって眠れねえ。
しかたねえ。教えてやるか。
噺の最後の『二本買った』をよく考えてみな。
『にほんかった』。『日本勝った』。
そんなに驚くようなことかい。面白くもねえ噺だよ。
戦時中は創作落語もやっていてな。俺はバリバリの戦争少年だったよ。
そうだな。『山号寺号』て噺が得意で、戦争の話題ばかり考えていたよ。
この話は短いが歴史のある噺でな。1707年に出版した笑話本『露休置土産』の「はやる物は山号寺号」に載っている笑いだ。
え、知ってるって。
『山号寺号』の歴史は知らなかった。でも若旦那と幇間が出てくる言葉遊びだってことは読んだことがある。
よく知っているね。
なに、最近落語のマンガが出た。
ほう、そいつは面白そうだな。
主人公は女の子。いいね。女性も落語をやる時代になった。
俺のころは女の落語家なんて見向きもされなかった。
いい時代になったものだな。
わたしは幇間を知らない。
ま、それが普通の反応だわな。
幇間てのはよ、酒席で主や客の機嫌をとる職業さ。
誰に対しても、持ち上げなきゃいけない仕事をしていると思えばいい。
ちょっとその根田やって欲しい。
仕方ねえな。こうして座布団に座っているんだ。まあやってやるか。
最初のコメントを投稿しよう!