人間

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 晴れた空。空を隠すように立ち並ぶ高層ビル。とあるビルの一角に、巨大なテレビ画面が設置されている。  人間たちは、そこから流れる音声に、耳を傾けていた。 「速報です。サバンナの動物たちが、西へ大移動をしているという情報が入りました。こちらが、その映像です」  画面が、ドローンで撮影されたらしき映像に切り替わる。 「わかりますでしょうか」  アナウンサーの声が入る。 「ヌーやハイエナ、キリン、ライオン、コアラまでもが、ゆっくりとですが移動しているのが分かります。警備員が地区へ戻るよう誘導しますが、今のところ効果は期待できません。  この地区は自然保護区に指定されているため、麻酔銃を使うことは原則、禁止されています。そのため麻酔銃で動物たちを移動させることは困難です。そしてこの現象も十分不可解ですが、もっと不思議な現象が起きました」  また、画面が切り替わる。携帯電話で撮影されたらしきその映像には、動物たちが並んでいた。 「この映像だけでは分かりにくいので、これを上空から撮影したものがあります。こちらです」  動物たちが並んで形作っていたものは、「Don`t destroy nature. don`t pollute earth.」  直訳すると、「自然を壊すな。地球を汚すな。」となる。 「一体どういうことでしょうか。専門家の先生に、話を伺いたいと思います」 「はい。おそらくこれは、動物たちからの、人間への抗議でしょう」 「どういうことでしょうか」 「いま人間は、環境に良いことはおろか、悪いことしかしていません。このままでは環境破壊が進み、子供たちの子、孫の代まで、この安全な地球が残っている、という保証は、どこにもありません。  今からでも、一人一人が意識して環境に良いことをすれば、環境に優しい世界を作ることが可能になるはずです!」  専門家の発言から数年後。全世界が変わり始めた。人間が、地球に良いことをするということを心がけ始めたのだ。  人間が変わるきっかけとなったのは、地球を思うライオンが始めた、一つの小さな動物会議だろう。                                   《FIN》
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