17人が本棚に入れています
本棚に追加
人間
晴れた空。空を隠すように立ち並ぶ高層ビル。とあるビルの一角に、巨大なテレビ画面が設置されている。
人間たちは、そこから流れる音声に、耳を傾けていた。
「速報です。サバンナの動物たちが、西へ大移動をしているという情報が入りました。こちらが、その映像です」
画面が、ドローンで撮影されたらしき映像に切り替わる。
「わかりますでしょうか」
アナウンサーの声が入る。
「ヌーやハイエナ、キリン、ライオン、コアラまでもが、ゆっくりとですが移動しているのが分かります。警備員が地区へ戻るよう誘導しますが、今のところ効果は期待できません。
この地区は自然保護区に指定されているため、麻酔銃を使うことは原則、禁止されています。そのため麻酔銃で動物たちを移動させることは困難です。そしてこの現象も十分不可解ですが、もっと不思議な現象が起きました」
また、画面が切り替わる。携帯電話で撮影されたらしきその映像には、動物たちが並んでいた。
「この映像だけでは分かりにくいので、これを上空から撮影したものがあります。こちらです」
動物たちが並んで形作っていたものは、「Don`t destroy nature. don`t pollute earth.」
直訳すると、「自然を壊すな。地球を汚すな。」となる。
「一体どういうことでしょうか。専門家の先生に、話を伺いたいと思います」
「はい。おそらくこれは、動物たちからの、人間への抗議でしょう」
「どういうことでしょうか」
「いま人間は、環境に良いことはおろか、悪いことしかしていません。このままでは環境破壊が進み、子供たちの子、孫の代まで、この安全な地球が残っている、という保証は、どこにもありません。
今からでも、一人一人が意識して環境に良いことをすれば、環境に優しい世界を作ることが可能になるはずです!」
専門家の発言から数年後。全世界が変わり始めた。人間が、地球に良いことをするということを心がけ始めたのだ。
人間が変わるきっかけとなったのは、地球を思うライオンが始めた、一つの小さな動物会議だろう。
《FIN》
最初のコメントを投稿しよう!