荒療治

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荒療治

「それで……旗羅原さん。僕が天葉にも見えるようにするって、一体どうするんですか?」 「決まってるじゃないか、花珠星。砂を使うんだよ。じゃあ早速……」 「あっ。えっ。待って。説明してください。きゅ急すぎますって! ……ちょ、ちょっと待ってください!」 「ごちゃごちゃうるせえ。この際、方法は選り好みできない。アンタが頼んだことだろうがよぉぉぉ!」  今更のように説明を求める花珠星に対し、ワンマンタイプの旗羅原は、有無を言わさず周囲から砂を集め、真っ直ぐに狙いを定めてその砂を発射する。 「ボブゥッ!?」  直撃した大量の砂をモロに浴びた花珠星は、顔面にも容赦なく飛んできた砂に埋もれ、変な声を上げた。 「あっ、悪い悪い。今、目と鼻と口と、あと耳か。開けられるように砂を退けるから」  どことなく横柄とも取れる態度で事も無げに言いながら、手も触れることなく魔法でパッと砂を払う旗羅原。その様子を見ながら、花珠星は旗羅原小鞠が嫌われ者だという噂も頷けるような気がしてきていた。 「最初から避ける方法はないんですか!?」 「あるけど、私がちょっと面倒なわけですよ」  と、小さな手で耳を掻きながら、旗羅原は花珠星に鏡を見るように促した。 「ほれ。これなら、見えるでしょうが?」  言われた通りに花珠星は電子端末の鏡を見た。 「えっと……ああ、なるほど、こういうことだったのか」  そこには、透明になってしまった花珠星の顔と体を上から覆うように固めることで形作られた、花珠星そっくりな砂の人形の姿が映っていた。 「すごい……ですね。砂なのに、ちゃんと人間に見えます」  花珠星が感心していると、旗羅原小鞠は既に別の地へ飛び立つ準備をしていた。 「じゃあ、任務完了ですな。バァァイ!」  と言い残し、空へと身を翻す。 「あ、ちょっと、まだお礼を……、あ、ありがとうこざいましたぁぁぁぁ!」  これで、花珠星自身はまだ透明なままだが、花珠星の顔と体の造形は、誰が見ても認識できるようになった。
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