やるせない

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 何がマシかと聞かれれば、今もとりあえず生きていられていることだと答える。  何が不満かと言えば、今生きてるこの現状で、 「今日もですか?毎週のように休日出勤されてますよね?ちゃんと休まれてます……?」 「……それもお互い様でしょう。平日は学校で、休日は働いて……。ちゃんと自分の時間は取れているんですか?」  この先に何があるのかと、ずっと自問自答している。  将来の不安を抱えながら生きている人も大勢いれば、大したこともしないままで莫大なお金が懐に入り続けている人もいる世の中だ。  馬鹿馬鹿しい。 「自分の時間は……まあ。お金は必要なので」  誤魔かしたように少し笑った顔で言われたその言葉。 「それは……」 「うち母子家庭なんです。だから……」  何も持ってして国のため、国民のためなのか。  考えないわけではない。ただ、考えたって無駄なのだ。 「……すみません。他人のくせにズカズカと」 「いえ、話したのは私なので。あなたが母と同じような表情をしてたものでつい……」 「……」 「無理はしないでくださいね」 「……あなたこそ」  毎回心配されるようでは休日にこのお店は使えそうにない。会社から近いし、おいしいし、人もそれほど多くない。お気に入りだったのだが。  憂鬱を超えて絶望。太陽がやけに突き刺さった。 **** 「よう。最近どうよ」   「どうもこうも何も……やけに楽しそうだな」  最後に会った日から三ヶ月が経っていた。 「お得意のヘラヘラか?」 「今回は強がりじゃない。本当に気分がいいんでな」 「百円でも拾ったのか?」 「……辞めたわ、仕事」 「……そうか。それで?」 「だから気分がいい。今日は奢ってやるよ」 「そういう話じゃない。これからのことを聞いてるんだよ」 「さあ?まあ、適当に転職活動するさ。まだ若いからなんとかなるだろ」 「……ならなかったら?」 「その時はおとなしく……」  そいつはそこで言葉を切って、刺身を数枚口に放り込み、それをビールで喉奥に流し込んだ。  そして、 「死ねばいいさ」  そう言った。
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