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「Ωが大変なのは、翔真も知ってるだろう? 例え話をしていた時とは訳が違う。翔真の一生を左右するんだ。βなら仕事も選べる。でもΩは受け入れてくれない企業だって未だにいっぱいある」
「それでも……それでも俺は……蒼斗と番になりたいよ……」
「ビッチングで苦しむのも翔真なんだぞ。一回や二回のセックスでΩになれる訳じゃない。バース性が変わるまで、ひたすら俺の性液を注ぎ続けないといけない。それに、もしΩへの性転換が成功したとして、その間翔真はまた高熱に魘される。大学だって休まないといけない」
「……」
そこまで正論を言われると、何も言い返せない。
自分はなんて子供地味ているんだと、反省する。蒼斗が真剣に考えてくれているのが嬉しく思う。
それでも、蒼斗との番の夢を捨てる気には到底なれなかった。
「……夏休み」
「なに?」
「夏休みならいい?」
「何が?」
「ビッチング! それなら大学も行かなくていいし、時間もあるだろう?」
「翔真……。別に慌てなくても、卒業してからでもいいじゃん」
「遅かれ早かれ俺と一緒になってくれるんなら、早い方がいい。ずっと番に憧れてた。冗談なんかじゃないんだ。俺はΩになるのを、ずっと夢見てきた。それになれるチャンスが今なら、逃したくない」
雅哉と耀が番になると聞いたから、真似して言ったのではない。
これは紛れもない、心の底からの希望だ。
翔真の切羽詰まった様子をじっくり観察していた蒼斗は、首を縦に振ってくれた
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