今すぐに来て

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 ホテルに着いて、僕はエレベーターに飛び乗った。どうして行きたい部屋は一番上の方なんだろう。  エレベーターのドアが開くと知らないボディーガードに捕まった。 「君は誰だ?」 「ジョーイに呼ばれてきました、僕はジュン・キムラと言います」 「聞いてないぞ、そんな来客は」  190㎝以上ある、ガタイのいい、まるでシュワルツェネッガーみたいなボディーガードが近づいてくる。 「じゃあジョーイに連絡しますから」 と尻ポケットに手を伸ばした瞬間、銃を向けられた。 「動くな! 動いたらこの場で撃つ」 「僕は、ジョーイの友達です!」 「ゆっくり両手を挙げろ!」  ブルブルとスマホが震え出した。きっとジョーイだ。君は歌の世界のお姫様だね。でも守られているのにちっとも幸せそうじゃない。  僕はゆっくりと両手を挙げた。 「ジョーイに訊いてくださ……」 「うるさい! 喋るな! 黄色いサルが!」  冷や汗が出る。銃を向けられるなんて生まれて初めてだ。そしてあからさまな人種差別を受けるのも。そうか、アジア人の男の友達がいるなんて思いもしないよな。ジョーイは混血だけど白人の女の子だ。  まだスマホは震え続けている。  ジョーイ。  扉を開ければ、すぐ側にいるのに。  ポーン、と音がして、エレベータの扉が開く。 「何をやっているんだ? ミスタースミス」  呆れたような深く低いこの声は……。 「不審者が侵入しています! コイツです、ミスタージャクソン」 「……ミスタースミス、銃を下ろせ。この人は来客だ」 「そんなわけがないじゃないですか、こんな黄色い子ザルが」 「聞き捨てならないな。俺はもっと色が濃いが何か問題があるか? ん? この方は、ジョーイさんの昔からのお知り合いだ」  ミスタージャクソンが電話をかけ始めた。 「ジャクソンです。ジョーイさん、ジュン・キムラさんが来てますから、廊下に迎えに来ていただけますか?」  程なくジョーイが大きな扉を開けて走ってきた。 「ジュン!」  思い切り僕に抱きついてくる。 「ミスタースミス。そういう訳だ。ビル・ウィザースが好きな人間に悪い奴はいないって覚えとけ」  ミスタージャクソンは彼の肩を叩いた。何かジャクソンさんが囁いていたけど聞こえなかった。ミスタースミスの顔はすっかり青ざめていた。 「ミスタージャクソン、ありがとうございます」 「ジュンさん、ごゆっくり。ライブ良かったぞ」 「来てくれたんですか⁈」 「さっきまで非番だったからな」  ミスタージャクソンはニヤリと笑って、親指を上げた。
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