60人が本棚に入れています
本棚に追加
「ファルス……」
わたしは、思わず、呼びかけて駆け寄り、抱き締めた。
「あなたは、母上なのですね……?」
ファルスはそう言った。
ファルスの年は、もう三十を超えているはずだ。
なのに、こんなに元気だ。
「ファルス……、あなた、体の具合は……?」
わたしの疑問が分かったらしい、ファルスは言った。
「母上、リナールが、父上のかかっていた病の薬を作ってくれたのです。私は、それを飲んでいるので、父上のように体力が衰え、死ぬことはありません」
わたしは、それを聞いて、涙が溢れた。
リナールが、リナールが、ついにやってくれたのだ。
わたしは、涙を拭って、言った。
「ファルス、ずっと、会いたかったのです。……ずっと、愛していました」
すると、ファルスも応えた。
「母上、私もです。ずっと会いたかった……。私は、今、元気に国王として、プルシアン王国を治めています。母上に会えたら、言いたかった……」
ファルスは、じっと私を見つめた。
「私を、産んで下さって、ありがとうございました」
その時、わたしは、すべてを悟ったのだ。
わたしが、あのプルシアン王国に、飛ばされたのは、このファルスを産むためだったのだと……。
人生に起こることには、すべて、意味があって、それを果たしていけば、幸せは、おのずと訪れるのだ。
『王様騎士とわたし』
END
最初のコメントを投稿しよう!