第一章 国王騎士

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一通り、患者を治療した後で、ファサル国王の番になった。 ファサル国王が、診察室に入って来た。 「今回の傷は、顔と肩と、それに背中ですね……」 リナールが、あらかじめ聞いていたのか、言った。 「ああ、頼む」 ファサル国王はそう言うと、服を脱いだ。 背中を見たわたしは、思わず顔を背けたくなった。 ぱっくりと割れた背中の傷からは、血が滲んでいた。 わたしを庇ってできた傷だ。 わたしは、申し訳なさでいっぱいになった。 リナールは、その傷を診て、言った。 「縫合が必要ですね……。サラ、針を炎で消毒してくれますか?」 「あ、はい」 わたしは、そう答えたけれど、原始的な消毒方法だ。 そんなことはしたことがなかったが、知識だけはあったので、リナールが出して来た針を、アルコールランプの炎で消毒し、白い糸状のひもを通して、リナールに渡した。 リナールは、奥から、小瓶を持って来た。 そして、ファサル国王に言った。 「この薬を飲んで下さい。わずかですが、鎮痛剤になると思います。……しかし、痛みますよ……すみません」 「構わぬ」 そう、ファサル国王は、ひとこと言うと、小瓶の薬をグッと飲んだ。 「では、縫合します」 リナールは、そう言うと、真剣な表情になり、ファサル国王の背中に向いた。 背中の皮膚を突いて、縫っていく。 わたしは、その痛みを想像して、見ていられなかった。 しかし、ファサル国王は、一言も弱音を漏らさなかった。 縫合が終わった。 「世話になった」 ファサル国王は、そう言うと服を着た。 すると、診察室のドアが開いて、村人たちが、雪崩れ込んで来た。 「ファサル様! 大丈夫でしたか?!」 「ああ、大事ない」 ファサル国王は、心配そうな村人たちに笑顔で言った。
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