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「ファサル様……」
村人たちは、泣かんばかりだった。
本当に、この国王様は、国民に慕われているのだ。
その国王様がわたしに言った。
「私は、城に帰るが、そなたはどうする?」
「わたしは、もう少しここに残って、後片づけのお手伝いをします。それに……わたしの名前は、サラと言います。本当に、助けて下さり、ありがとうございました」
わたしは、心を込めてそう伝えた。
すると、ファサル国王は、私を見つめて、微笑んで言った。
「サラ、無事で何よりであった」
ああああ、なに?
この人、めっちゃ、カッコいい……。
わたしは、城へ帰って行くファサル国王の後ろ姿を見ながら思った。
「ファサル様に、恋をしてはなりませんよ」
リナールの声に、ぼーっとなっていた、わたしは、ハッとした。
「え……、やっぱり、身分違いですよね……。王様だし、あんなに素敵で、みんなに好かれていて……」
それを聞いて、リナールの顔が曇った。
「皆が、あの方を慕うのは、良い方だからだけではないのです……」
「えっ?」
「あの方は、お命が……」
と言いかけて、リナールは、口をつぐんだ。
「えっ? 周りの国から、命を狙われてるってことですか?」
「いいえ……。まだ、この事は、あなたは知らない方がいいでしょう、サラ」
何だろう……。
わたしは、気になったけれど、リナールは、それ以上話そうとはしなかった。
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