60人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 国王騎士
わたしは、この奇妙な格好をした外国人男性にも、ちゃんとお礼を伝えようと思った。
なぜ、こんな格好をしているのか分からないが……。
中世ヨーロッパ風の騎士のコスプレをしている、変わった外国人?
わたしは、不思議に思いながら、言葉が通じるか分からなかったが、言った。
「あの、ありがとうございました……」
すると、その男性は、やはり、わたしにはわからない言葉で、何か言った。
「プルシアン」……その言葉だけは、聞き取れた。
そう言った彼は、青白い顔色をしていた。
肩からは、血が出て、顔の頬の切り傷からは、赤い血が流れているのだ。
出血がひどいのだろう。
わたしは、言葉が通じないことは分かっていたが、言った。
「とにかく、そのけがの手当てをしないといけないですね……。どうされたんですか?」
当然、彼に伝わることはなかったので、わたしは、勝手に彼の手当てをしようと思った。
まずは、傷を見て、止血しなければ。
わたしは、彼に言った。
「傷を見せて下さいね」
そして、彼の肩に触った。
その時だった。
周りの景色が、まばゆく輝き、目を開けていられなくなった。
わたしは、思わず、目を閉じた。
何分、いや、何十秒かが経った。
そして、周りが暗くなったので、恐る恐る目を開けた。
すると!
そこは、いるはずだった神社の参道ではなく、広い高原だった。
どう見渡しても、日本の風景ではなかった。
そばには、彼がいた。
そして、彼が言った。
「そなたは、誰だ?」
いや、正確には、彼は、前の分からない言葉でしゃべっているのだが、わたしには、その意味が分かったのだ。
わたしは、酷く困惑した。
「あ、あの、ここは、どこですか? それに、あなたは誰ですか?」
驚いたことに、そう私は、日本語で言ったはずなのに、彼が使う分からない言葉をしゃべっていた。
「ここは、プルシアン王国だ。そして、私は、国王のファサルである」
そう、彼は、彼の国の言葉で言った。
そこで、わたしは、激しく動揺しながらも、理解した。
ここは、日本でなく、どこか違う時空の国で、わたしは、この国の言葉を理解し、話せるようになったのだ、と……。
最初のコメントを投稿しよう!