第四章 新しい命

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わたしは、赤ちゃんをファサル国王に対面させた。 ファサル国王は、赤ちゃんを見ると、目に涙を溜めて、潤んだ声で言った。 「可愛いな……」 そして、ゆっくりと、手を伸ばした。 わたしは、驚いた。 ファサル国王は、もう、体が動かせなかったからだ。 なのに、その手を伸ばし、手の平で、赤ちゃんの小さな頭を撫でた。 「ファサル様……」 わたしは、それを見ただけで、泣けて仕方がなかった。 ファサル国王は、そんな私に、言った。 「ありがとう、サラ……私は、そなたと出会うために産まれて来たのかも知れぬ……ありがとう……」 ファサル国王は、そう言うと、ゆっくりと瞳を閉じた。 「ファサル様?」 わたしは、急に不安になって、呼びかけた。
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