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皆の涙が空から降るように、小雨が降っていた。
わたしは、ファサル国王の残した、幼い我が子を抱き締めて、泣き崩れた。
ファサル国王の葬儀が終わって、三か月が経った。
ファサル国王の息子は、ファルスと名付け、大切に育てていた。
しかし、わたしは、悲しみから抜けられなかった。
そんなわたしに、リナールが、重大なことを言った。
「サラ……。ファサル様の遺伝病は、ファルス様も受け継いでいる可能性が高いです……」
わたしは、絶句した。
「そんな……」
「ファサル様の病の研究は今も続けています。しかし、まだ、解明までには時間が掛かるでしょう」
わたしは、絶望した。
ファサル国王と同じ病気で、愛しい我が子が、三十歳までに亡くなる……。
わたしより先に死んでしまう……。
わたしは、すべてに絶望していた。
もう、何もかも、辛かった。
この現実から、ただ、逃れたかった。
わたしは、ふらふらと、一人で村の外れの荒れ地まで来た。
その時、草むらから、一人の男が飛び出して来た。
「悪魔の魔女め! ゴードン国王の敵討ちだ!」
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