60人が本棚に入れています
本棚に追加
第六章 運命の意味
あの日から、もう、三十年が経った……。
わたしは、どうしようもなかったので、元の看護師の仕事に復職し、生活もファサル国王と出会う前の暮らしに戻っていた。
しかし、ファサル国王との日々を忘れることはなく、そして、ファルスのことを考えない日はなかった。
わたしは、毎日仕事が終わり、ファサル国王と出会った、あの時間になると、神社へ行った。
もう戻れはしないと、分かってはいたけれど、足は自然と毎日同じ場所へ向かう。
そんなある日。
小雨が降っていた。
その雨の中、神社の前に、人が立っていた。
外国人男性らしかった。
その男性が、振り返った。
わたしは、息を飲んだ。
「ファサル様……!」
ファサル国王にそっくりだった。
いや、良く見ると、似てはいるが、別人だと分かった。
そして、わたしには、分かった。
成長した我が子、ファルスだと。
最初のコメントを投稿しよう!