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わたしたちは、名残惜しそうに、手を振り続ける父親を後にして、城へと向かった。
お城への道中には、水底の見える綺麗な小川が流れ、両岸には、可愛らしい花々が咲く丘があった。
その丘を登っていくと、白い美しい城が見えた。
私は、本物のお城なんて、見たことがなかったので、そのお城が大きい規模なのかは、分からなかったが、総じて、こじんまりとしているように思った。
先ほどの父親も言っていたが、このプルシアン王国という国は、大国に囲まれた、小規模な国のようだ。
わたしたちは、城の門をくぐり、お城の中へ入った。
「ファサル様! おかえりなさいませ」
そう出迎えてくれたのは、黒髪の長い、華奢な体つきの美しい男性だった。
「シア。今、戻った」
ファサル国王が、答えた。
そして、馬から下りる時に、ふらついた。
「大丈夫ですか? また、ご無理をなさって、お怪我をされているのでしょう?」
シアと呼ばれた男性は、心配そうに言った。
「大事ない」
しかし、ファサル国王は、そっけなく言った。
わたしは、思った。
大事ないことはないでしょう!
大けがじゃない!
そのわたしの気持ちが分かったように、シアが言った。
「また、嘘をお吐きになる! ファサル様、リナールのところへ行って、傷を診てもらって下さい。今すぐに!」
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