第六章 運命の意味

2/2
前へ
/60ページ
次へ
「ファルス……」 わたしは、思わず、呼びかけて駆け寄り、抱き締めた。 「あなたは、母上なのですね……?」 ファルスはそう言った。 ファルスの年は、もう三十を超えているはずだ。 なのに、こんなに元気だ。 「ファルス……、あなた、体の具合は……?」 わたしの疑問が分かったらしい、ファルスは言った。 「母上、リナールが、父上のかかっていた病の薬を作ってくれたのです。私は、それを飲んでいるので、父上のように体力が衰え、死ぬことはありません」 わたしは、それを聞いて、涙が溢れた。 リナールが、リナールが、ついにやってくれたのだ。 わたしは、涙を拭って、言った。 「ファルス、ずっと、会いたかったのです。……ずっと、愛していました」 すると、ファルスも応えた。 「母上、私もです。ずっと会いたかった……。私は、今、元気に国王として、プルシアン王国を治めています。母上に会えたら、言いたかった……」 ファルスは、じっと私を見つめた。 「私を、産んで下さって、ありがとうございました」 その時、わたしは、すべてを悟ったのだ。 わたしが、あのプルシアン王国に、飛ばされたのは、このファルスを産むためだったのだと……。 人生に起こることには、すべて、意味があって、それを果たしていけば、幸せは、おのずと訪れるのだ。 『王様騎士とわたし』 END
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加