ヒトガタ

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 見えざる力がかちあって、電流がはぜたかのような感じがした、と佐藤は話した。 「なにが怖いって、人形がこっちを見てるわけないんだよ」  外してあったんだよ、と大きなため息をついて佐藤は続けた。 「ヘッドに目玉は入れてなかったんだ」 「え……」 「大体、あんなふうにカツカツ固い板にぶつかりまくってたら、ガラスが欠けるかと思うだろ。白目ならまだしも、()きガラスに傷が付きでもしたらとマジで焦ったわ」 「そっちかよ」 「そりゃ無いはずの目玉と目が合えば、(こえ)えっちゃ怖えけどよ。跳ねてたほうの目玉は、俺が作ったやつだからな。作業時間考えたら、不良品にされるほうがよっぽど(こえ)えっての」  憤慨するかのように酒をあおると、息をつき、冷静さを取り戻す。  「さすがに慌てたけど、よく見たらやっぱり人形に目玉なんて入ってなかった。だから、俺が寝ぼけただけかと思ったんだけどさ」 「うん」 「別件で問題が起こった。返って来ちゃったんだよ、目玉が」 「え?」 「オークションで発送したやつ」 「落札者に届かなかったのか? 宛先不明?」 「いや、先方の都合による返品」 「ええ……?」 「理由もなにも書いてなくってさ、ただ、お返しします、返金は不要です、って付箋が貼ってあって」 「どういうことだよ」 「さあなぁ」  佐藤は不可解だとばかりに顔をしかめ、首を傾げた。 「単に気に入らなかったのか」 「だけど返品してくるような相手なんだから、ふつうは金返せって言うもんだろ。もしくは……届いてから、なにか、よほどよくないことでも取引相手の身に起こったとかでなければ──」  口走ってみて、自分でもなにを放言してるのかと考えた。
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