15人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
見えざる力がかちあって、電流がはぜたかのような感じがした、と佐藤は話した。
「なにが怖いって、人形がこっちを見てるわけないんだよ」
外してあったんだよ、と大きなため息をついて佐藤は続けた。
「ヘッドに目玉は入れてなかったんだ」
「え……」
「大体、あんなふうにカツカツ固い板にぶつかりまくってたら、ガラスが欠けるかと思うだろ。白目ならまだしも、透きガラスに傷が付きでもしたらとマジで焦ったわ」
「そっちかよ」
「そりゃ無いはずの目玉と目が合えば、怖えっちゃ怖えけどよ。跳ねてたほうの目玉は、俺が作ったやつだからな。作業時間考えたら、不良品にされるほうがよっぽど怖えっての」
憤慨するかのように酒をあおると、息をつき、冷静さを取り戻す。
「さすがに慌てたけど、よく見たらやっぱり人形に目玉なんて入ってなかった。だから、俺が寝ぼけただけかと思ったんだけどさ」
「うん」
「別件で問題が起こった。返って来ちゃったんだよ、目玉が」
「え?」
「オークションで発送したやつ」
「落札者に届かなかったのか? 宛先不明?」
「いや、先方の都合による返品」
「ええ……?」
「理由もなにも書いてなくってさ、ただ、お返しします、返金は不要です、って付箋が貼ってあって」
「どういうことだよ」
「さあなぁ」
佐藤は不可解だとばかりに顔をしかめ、首を傾げた。
「単に気に入らなかったのか」
「だけど返品してくるような相手なんだから、ふつうは金返せって言うもんだろ。もしくは……届いてから、なにか、よほどよくないことでも取引相手の身に起こったとかでなければ──」
口走ってみて、自分でもなにを放言してるのかと考えた。
最初のコメントを投稿しよう!