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「俺にとって、まさに理想の家族だ。そのためなら、いくらでも愛情をかけて俺好みに染め上げてやるよ」
佐藤から放たれる情熱の威圧に、胃の腑が急降下するような感じがした。
画面のなかから、こちらに視線を投げてやわらかに微笑む美男子が、両目で訴えかけているような気がしてきた。この笑顔すら、佐藤の妄想力を現出させたものかと思うと、全身の毛穴が逆立つようで、ぞわぞわする。
魂のない人型が、まるで生きている者のように画面から見つめてくる。
こころなしか不安そうに見えたのは、気のせいとも思えない。同意する。さすがにこんなのといっしょにいたら──
怖い。
◆ ◇ ◆
余談となるが、佐藤にはその後も妙なことはなにも起こらなかった。
ありあまる愛情で、本当に怪現象を押さえ込んでしまったのだとすれば、怨念も他愛ないものに思う。
いや、ひとつだけ、あいつの生活にも変化は起こった。
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