#1 訃報

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ガラス製の棺に入った叔母夫婦を見つめた。冷却装置の付いた冷蔵庫のような棺だ。顔立ちはきれいだが化粧は濃いように見える、もしかしたら傷などを隠しているのかもしれない。 トラックに追突され、運悪く前にもトラックがいて挟まれ、完全に押しつぶされたそうだ。義理の叔父は直後は意識があったそうだが、結局ふたりとも亡くなった。 立ちつくす晴樹を見た、泣いてはいないが、表情もなかった。あまりのことに現実を受け入れていないのか──結婚は反対されたが、仲が良い家族だった。そんな家族がなぜこんな悲劇に巻き込まれるのか。 「とにかく、うちでは引き取りませんから」 刺々しい声で言ったのは叔母の夫の母親だ、晴樹のことか。まだ高校2年生、未成年では誰かが親代わりになる必要があるということか。 「うちでも無理よ。苗字はそちらなんですから、そちらが引きとるべきなんじゃないんですか?」 祖母が負けじという。取り合いをするならまだしも押し付け合うのを本人を目の前にしてやるかね……呆れながらもまずは線香を手向ける。 叔母夫婦も無念だろう。まだ未成年の息子を残し、軌道に乗っている事業もここで終わりだ。ふたりでテキスタイルのデザインの会社をやっていた、テキスタイルだけではと巾着などの販売も手掛けて、かなりの売り上げを出していたのに。
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