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振り返れば、うちの親も渋い顔をしていた。父は晴樹の行く末を気にして心配にしているようだが、母は引きとらない派なのだろう。既に成人した子がふたり──俺も妹ももう20代も半ばを過ぎ家も出ている、そこへ今更懇意にしていた家族とは言え高校生の相手などできないのかもしれない。
叔父も声を上げ先んじた。
「うちも小さい子がいるからなあ」
確かにまだ幼稚園の子がいる、4人の子持ちは大変だ。
「うちも年頃の娘がいるもの、そこへ男の子なんて」
叔母のご主人の妹さんだ、確かに娘を育てているところへ親族とはいえ年頃の男子が入ってくるのは嫌か。
親族の言い争いを晴樹は両親の亡骸をじっと見つめて聞いていた。両親を突然失い、誰からも慰めの言葉もなく押し付け合うのを聞かされている、そんな状況に誰が耐えられるのか?
「孤児院かなあ」
うちの父が呟いた、今どき孤児院はない、児童養護施設だが、そんなことはどうでもいい。
「そうねえ、葬儀や相続とかの関係はやってあげて、あとは──」
「俺が引きとるわ」
母の声を遮って声を上げていた。途端に全員の視線が注がれた、一瞬は嬉しそうな目だったものが、俺を見た途端がっかりしたものに変わったのが判る。
「何言ってるの、結婚もしてないあなたが子育てなんかできるわけないでしょ」
祖母が怒りをむき出しにして言った、そんなものは鼻で笑ってしまう。
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