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「夜中に何度も起きるおむつをした赤ちゃんだっていうならまだしも、こんだけデカいガキなら手もかからないだろ。来年には成人だ、それまでなら一緒に暮らして行動の監視と金銭面の面倒見るくらいなら俺でもできる」
「できる、って、将宗、子育てはそんな簡単じゃない、ましてや人んちの子なんて……」
父が心配そうに言うが、どうでもいい。
「こんだけいい年の大人が揃って、みっともない話しかできないからだろ。どうせすんならここじゃねえとこでやれよ」
言えば全員揃って視線を避け、なにやらぶつくさ言い始める。
「まあ、一番は晴樹の気持ちだけどな。どうする? 俺と暮らすか?」
聞けば晴樹は一瞬驚いた顔を見せた、嫌なのかと思ったが違うようだ、すぐに溶けたように微笑み、小さな声で「うん」と答えた。
「んじゃ決定な。まずは葬式の相談か。喪主は晴樹でいいけど、俺も同席するわ。担当さんは?」
「あ、声をかけてくださいって……」
そう言っていたと俺の父が教えてくれた。
「んじゃ行くか、みんなももう帰れよ。叔母さんたちが可哀そうだ」
言えば女たちは「まあ」と怒りを露にし、男どもはわたわたと慌てだす、本当にこういう時に性格出るわな。
それについてあれこれ言う気にもなれずに歩き出した背に、父が声をかけてくれた。
「将宗、金銭面は俺もサポートするから……って、お前、都内に住んでるだろ、晴樹君を引っ越しさせるのか? それも金がかかるから俺が……」
「晴樹は学校もあんだろ、高校じゃ転校も面倒だし、通える距離だとしても、うちは賃貸で、晴樹んとこは分譲だったから俺が引っ越ししてもいいし」
言いながら「ああ」と思う、俺には同居人がいる、どう説明するかな……。
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