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「まあその辺は晴樹と相談、って金は要らねえよ、俺、こう見えても高給取り」
偉そうに言えば、叔母の夫の妹さんの目がきらりと光ったような気がした。年頃の娘ってって言ってたな……盛らないにしても、あんま仕事のことは言わないようにしよう。
「ともあれお疲れ。今日は解散、通夜、告別式の連絡はまたする」
晴樹に行くぞと声をかけて対面室を出た。
「将宗くん……!」
すぐに晴樹が声をかけてくる、10も年上だが、子どもの頃から知っていれば自然と敬称は「くん」だ。
「ごめん……ありがとう……!」
その言葉に精いっぱいの気持ちを感じた、会話が聞こえていたのだ、きっと苦しかっただろう。ああしたい、こうしたいと言いたくてもまだ子どもの自覚もあれば主張もできずにいたのでは。
「こっちこそ悪かったな」
頭に手を置き謝った。
「別に揃って晴樹を嫌いなわけじゃない、やっぱり叔母さんたちの死を受け入れられなくて、あんなこと言ってんじゃねえのかな。たぶん」
たぶん、と言い濁せば、晴樹はにこりと微笑んだ。よかった、少しは元気になれたか。この先の不安が少しは解消できたのかもしれない。
「ううん……将宗くんが面倒見てくれるって言ってくれて、すっごい嬉しかった……っ」
感極まった声と表情に、俺もいいことをしたのだと嬉しくなる。親代わりになろうなんては思わないが、せめて兄弟にはなれるかもしれない。
受付で声をかければ、相談室に案内され待つよう言われた。
「あ、そうだ、晴樹、ごめん。俺、同居人がいるんだわ」
切り出せば晴樹はきょとんとして同居人?と聞き返してくる。
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