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晴樹は全てを失った、まだ青春真っただ中で、ただ生きていれば楽しいだけの人生だったはずなのに、いきなり大海原に放り出されたのだ。
「心配すんな。晴樹が必要なだけそばにいてやるから」
背中を撫でながら言えば、晴樹は耳元で「え」と声を上げた。
「でも……将宗くんも、結婚とか……」
「いい歳なのにってか。まあ確かに親からは孫の顔ガーとか言われてるけど、結婚したいって気持ちより、まだ遊んでたい気持ちの方が上だな」
実際には付き合っているヤツはいるが、結婚だなんだということには、ならないだろう。
「恋人、いるんじゃないの?」
「うっさいほっとけ。人の心配はいいから、子どもは子どもらしく、自分の心配だけしてろ」
言えば晴樹は「ん」と返事をする。
「でも、同居人って恋人なんでしょ」
「ああ、違う違う、会社の後輩」
それは嘘ではないが、その先まで言う気はない。
「家賃折半で住んでんだよ、俺がいなくなればもっと安い家賃の部屋に引っ越すだろ」
「なら、うちに来ても……」
「そういうわけにもいかないだろ」
あいつを呼ぶわけには。
「職場が遠くなるっていうなら、おれが将宗くんちに行ってもいいよ」
「引っ越し面倒だろって、通学も面倒になるぞ」
「だったら……うち、部屋、余ってるよ。3人くらいなら、住めるから……」
元々3人で暮らしていたからというわけではない、家は4LDKなのだという、マジで広いな。
「ありがとな、聞いてみるよ」
その時ドアがノックされた、晴樹は慌てて離れていく。そりゃ男に抱き締められてるとこなんか見られたくねえよな。
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