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遊園地
「次あれに乗ろう」
「オッケー」
次のアトラクションを指差した恵に俺はついていく。今日は、先日の御礼にと、ビリオンダラー系列の遊園地の無料チケットを二枚、社長から貰って、恵と二人で来ている。二人とも高い所と絶叫系には強いので、既にジェットコースターは六本目だ。
「わー!」「キャー!」
楽しい。こういうのは、男性が乗れない事が多い為、恋人二人では楽しめず、仕方無く絶叫系に強い女友達だけで楽しむってのをよく聞くけど、俺はむしろ大歓迎だ。
「何か飲みたくなっちゃった」
「ちょっと休憩にしようか」
「自販機は・・・」
恵はキョロキョロしながら自販機を探す。俺は恵よりも先に自販機を見つけ、チャンスだと思った。
今日、一つのミッションを考えてきていた。それは手を繋ぐ事。そういう事は自然に行わないとダメだと色んな人から聞いた事がある。今、「自販機あっちにあるよ」とか言いながら恵の手をさりげなく引っ張れる。
仲の良い幼馴染みの異性が恋人になるのは凄く難しいと思う。もし、成功しなかった場合を考えると、簡単には告白なんて出来ない。また、どちらかが気合いを入れて一歩踏み込んでも、もう一方が照れてしまってごまかされてしまう。でも、こんなチャンスは無い。
俺が右手で恵の左手を握ろうとした瞬間・・・。
「あ、あそこにあった!」
ミスった・・・。少しだけ遅れた・・・。折角のチャンスを逃してしまった・・・。
ガックリと肩を落とし、今日は諦めて次の機会にするかと思った時。
「あっ!」
ガシッ!
恵が躓いてコケそうになったので、俺は慌てて手を掴んだ。
「あ、ありがとう」
「気を付けろよ」
俺達は手を繋いだまま、自動販売機へ向かった。
小春日和の心地よい陽射しの中、ヤッパリ女の子はちょっとどんくさいぐらいがちょうど良いなと感じながら、恵の笑顔を眺めて歩き、幸せを感じたのだった。
了
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