3人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
オリンピック男子百メートル決勝、アメリカ人選手、マイケル・ダグラスが九秒四六で駆け抜けるという快挙を成し遂げ、世界中が歓喜に沸いた。
そんな衝撃のニュースが世界に流れた翌月、オリンピック熱も少し下がってきた中、日本のテレビ番組でマイケル・ダグラスと百メートル走で勝負する生放送の企画があった。小学生の男女日本チャンピオン、中学生の男女日本チャンピオン、高校生の女子日本チャンピオンが各々ハンデを貰いながら好勝負を繰り広げる。そして最後、高校生男子チャンピオンでありながらモデルの京極敏が五メートルのハンデを貰っての勝負となった。ハンデは程良いながらも、流したレースが多いとは言え、ダグラスは六本目で疲れもあるので、京極が勝つかもしれないという雰囲気が漂っていたのだが、そこで事件は起こった。
空砲のピストル音が鳴り同時にスタート。五メートル前にいる京極との差は当然少しずつ縮まると思われたが、逆にどんどん広がっていく。 結局、十五メートルぐらい差がついて京極の圧勝になった。学生達は大盛り上がりで京極に駆け寄る。ただ、番組作成スタッフとしては接戦になって欲しかったに違いない。 視聴者や現場とテレビスタジオにいる出演者は、六本目だという影響が大き過ぎたと感じたのだが、タイムを見て驚愕する。
八秒五!
九十五メートルだったとはいえ速過ぎる。もし、百メートルだったとしても、九秒を切るのは間違い無い。生放送では計測機器の誤作動と結論付けたが、翌日、京極敏の祖父が会長を務める日本屈指の大企業、『ビリオンダラー』が『アビリテイーグラントシステム』を発売し、京極のタイムは計測機器の誤作動ではなかったんだと日本国民が納得する事になる。
最初のコメントを投稿しよう!