contents:09 ボスの威厳

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 ホテルの清掃員は、仕事を終え、リネン室から出ようとした時、  通達のあった一条の秘書が、明らかに菓子の入っているであろう箱を、  持っているのを見て、そっと様子を伺っていた。  すると、大槻一家が宿泊する部屋のチャイムを鳴らし、 「お嬢様、ご依頼の品です」 「ありがとう」  そう言って、一条のお嬢は部屋へ戻り、  秘書は、部屋の前で待機した。  一部始終を見ていた職員は、不意に顧客情報を思い出した。 (確か…、あそこのお子様は、アレルギーがあったはず)  これは大事になると、すぐに舞香に連絡を入れた。 「あ、舞香さん。すみません。大槻様のお部屋に、一条様の秘書さんが、お菓子だろう箱を届けていたのですが…」 "え、大槻様のお子様には、アレルギーがあるのに" 「はい、だから舞香さんにお知らせしたほうがいいかと思いまして」 "分かりました。すぐに対処します" 「はい、よろしくお願いします」 “陽子ちゃん、ありがとう”  舞香は、従業員からの連絡を受けるとすぐに、 「茜、料理長に大槻様のお子様にお出しするものを、お部屋にすぐに届けてもらうよう伝えて。昨日のうちに手配してたから、多分出来てると思う。私は、すぐにお部屋に向かうから」 「わかりました。すぐに」  そう言って、舞香は、大槻一家が宿泊する部屋へ急いだ。 □◆□◆□◆□  舞香が部屋の前に到着すると、  一条の秘書が、舞香の行く手を遮った。 「何か御用ですか?今、うちのお嬢様が歓談中です。ご遠慮していただいてよろしいですか?」  ホテルの従業員でもない、ましてや客でもない、一介の秘書からのあまりの言い草に、舞香は思わず声を荒げる。 「あなた、こちらにお菓子を届けられましたね? アレルギーチェックはされたのですか?」 「いえ。でも、必要ないかと」 「…なんて無責任な!大槻様のお子様は、玉子アレルギーがあるんです。あなた、ここで死人を出したいんですか!?」  舞香の剣幕に、秘書はたじろぐ。 「…ぃゃ、死人なんて、そんな…」 「アレルギーを甘く見ないでください。あなた、万が一の場合、責任とれるんですか?うちの職員が見てますから、責任とってもらいますよ!?」  動揺で狼狽える秘書を押しのけて、  舞香は、迷わず部屋のチャイムを鳴らした。
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