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わたくし、婚約破棄されましたわ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「フローレス!
ぼくは君との婚約を破棄する!」
わたくしに向かってそう怒鳴られたのは、
婚約者のエスイクス王子でした。
それもパーティー会場の一番目立つ場所で。
せっかくの宴席ですのに、
皆さま大騒ぎですわ。
何のパーティーなのかは、
わたくしも存じ上げませんが・・・。
「君は『聖女』にふさわしくない!
だから、ぼくの婚約者にもふさわしくない!」
どういう理屈ですの・・・。
「だからぼくは、
真の『聖女』であるこのヒルルと結婚する!」
そう言って王子は、隣にいた少女の肩を抱かれました。
「ああ、エスイクスさま・・・」
と、相手の娘も儚げなシナを作っておりますし。
ヒルル・・・、
わたくしや王子の通う学院に同じく席を置いている子・・・。
そして、確か先日大聖堂で、
『聖女』としての『力』の内包を認められたとか。
(あら、そういえばいつでしたかこの子・・・)
などと考えていると、
またもや王子は声を荒げ始めました。
「先日の事もヒルルから聞いたぞ、フローレス!
君に学院で階段から突き落とされたあげく、
倒れて動けないところを乱暴に踏みつけられたとな!
何てひどい奴なんだ君は‼」
「は?」
わたくし唖然としてしまいました。
あまりに事実・・・いえ、
真実と違うものですから。
ですが、この大ホールでのしかも王子さま(一応)のお言葉。
周りの貴族の方々もわたくしに、
疑惑や非難の眼を向け始めやがっていますわ・・・。
ヒルルさんは自分より身分が下のわたくしが、
王子の婚約者となった事が気に入らないのか、
事あるごとに学院で嫌がらせをしてきました。
わたくしの筆記用具をどこかに隠したり、
食堂でわざと手に持った食事をわたくしにかけたり、
わたくしが『聖女』という立場を利用して、
自分を奴隷のように扱っているなどとデマを流したり・・・。
あ、思い出したら少々ムカついてきましたわ・・・。
ですが、もちろんわたくしは、
ヒルルさんを階段から突き落としたりなどしていません。
あれはヒルルさんが、
わたくしを後ろから突飛ばそうとして起きた事。
気配を察したわたくしは身をかわし、
よけられたあの子が勝手に階段を転げ落ちた、
というのが真実ですわ。
ヒルルさんがそのまま動かないので、
わたくしも急いで階段を降り、
そばに駆け寄ったのです。
(息を・・・していませんわ!)
わたくし急いで靴を脱ぐと、
横たわるヒルルさんの背中に足をつけ、
そのまま全ての『力』を使って彼女を回復させたのです。
そう、わたくしは、
足から『力』を出す『聖女』なのです。
【つづく、ですわ】
_________________________________
『君』は読み進める……。
(ほう、聖女の婚約破棄ものか。
こういう場合、聖女を国から追放して、
その結果、追放サイドに災いがふりかかる、
というのが定石だが……。
それにしても、足から聖なる力とは斬新だな。
女視点の物語という事は、作者は女子か?
PNもジョセフィーネだし、きっとそうだろう。
そうか、女子か……。
――とりあえず、
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それが、読み手の礼儀というものだ……)
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