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『君』は相変わらず寝る時間にスマホを見る
「『我も衰えたものよ……』」
万年床の布団の上でストレッチをしながら、『君』は厨二臭いセリフをつぶやいた。
話し相手がいないと、自然と独り言も多くなる。
それも何故か聞かれたら恥ずかしいセリフばかり……。
⇦ ⇦ ⇦
今日もいつも通り、ただ金のためだけに働き帰宅。
一人暮らしかどうかは、『君』自身がよく知っている事だろう。
冷蔵庫のご飯をレンジで温め、
温泉卵を小皿にあけ、醤油とラー油をたらし、
インスタント味噌汁にとろろ昆布を入れお湯をそそぐ。
飲み物は濃縮還元・果汁100パーセントのジュース。
中途半端に健康に気をつかった夕食を、
PCでゲームの実況動画等を視聴しながらだらだらと食べる。
食べ終わった後もしばらく動画を見続ける。
「『俺、いったい何やってんだろ……』」
自己嫌悪を覚えたところでようやく後片付けをしてシャワーを浴びる。
いつも通りに。
そして布団の上でストレッチ。
これをやるとやらないとでは翌日の調子に差がでる…気がするからだ。
昔と比べると硬くなったかもしれない。
「『我も衰えたものよ……』」
⇨ ⇨ ⇨
ストレッチを終えたら就寝だ。
(無駄に疲れた……)
今日はそりの合わない上司とシフトが重なったため、一日中気が休まらなかったのだ。
高圧的な物言い……、
緊張……、
萎縮……、
小さなミス……、
嫌味……、
マウント……
いや、もうやめよう。
明かりを消し布団をかぶり、静かに目を閉じる。
……
……その前にちょっとだけ。
布団から片腕を出し、枕もとのスマホへと手を伸ばす。
作品投稿数最大と言われる某小説サイトを開き、
『追放』のキーワードで作品を探す。
そして、検索ヒットした作品群から日間ランキング4~10位辺りの作品の中で
何を読むかを選ぶ。
1~3位を選ばないのは、
他人の成功を素直に喜べない根性のためか……。
~~~~~~~~~~~~~~~~
作者:成嶋 幸児
作品名:『魔法陣は十人十色! 品のない理由で冒険者パーティーをクビになった少年魔術師、その品性に惹かれた新しい仲間と共にのし上がる』
(これにするか……)
『君』の夜はまだ続く……。
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