2人が本棚に入れています
本棚に追加
仕方なくうろうろしていると、スポーツ用品館にたどり着いた。
「すいません金属バットが欲しいんですけど」
「あ、バットですか?今は品切れなんです」
「木製でもいいんですが」
「バット自体がなくて。グローブならありますよ」
「ボーリングのボールは?テニスのラケットでもいいんですが」
「何に使う気なんだよ?」
「お前が考えてることだよ」
「怖っ」
店員さんは努めて冷静を装っていた。
「テニスラケットは無いんですが、バトミントンと卓球のラケットなら在庫がございます」
「じゃあそ両方ください」
「お包みしますね」
「テーピング用のテープも下さい」
こうして、ひと通り買い物を済ますと、明は近くの公園の木陰に座り込んで何やら作り始めた。
公園では子供達が、楽しそうに遊んでいる。なんたって夏休みだ。しかも世界の終わりなら、宿題の心配もないのだ。
平和な光景とは裏腹に、明はバトミントンと卓球のラケットをテープでぐるぐると巻きつけていた。
「何してるの?」
「魔改造」
「何が出来るの?」
「武器」
おれの知ってる明は優しいけど、芯がしっかりしているやつだった。
今は青白い顔のサイコパスだ。心が見えない。
「よし、出来た」
「何に使うんだよ」
「むかつくやつをぶっ殺す」
「誰に使うんだよ」
「親父かな。俺のことを差別的な言葉で侮辱した。あとは俺のことをキモイって言ったクラスのやつ」
明はブンブンと魔改造ラケットを振り回した。陸上部出身なのに、なかなかのスイングだ。
「まずはお前からだけどな」
まっすぐに俺の目を見てそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!