地球最後の夏だとか言う噂

地球最後の夏だとかいう噂

『今年の夏で、地球が終わるらしい』
いかにも眉唾な噂が出回り始めたのは、その年の6月くらいからだっただろうか？

「だったら受験勉強しなくていいよね」
「それなら10年じゃなくて5年用のパスポートにすればよかったな」etc…
誰もがそんな風に茶化してばかりで、本気で信じていなかった。
NASAが公式発表するまでは。
『8月末～9月初旬の間に、地球になんらかの物質が接近する可能性が非常に高い状況にあると言える』
実にフワッとした発表だったが、NASAが言うなら本当かもしれない！と世間がザワザワしはじめた。
それまでは「ノストラダムスの大予言」「明日からダイエットする」「俺、昔ジュノンボーイコンテストに出たよ」程度の信用度だったのが、急に現実味を帯びてきたのだ。

そんな中でも俺は家でドラマの再放送を見ていた。
最近テレビは再放送しかやっていない。
「どうせ地球が終わるなら、もう撮影しなくていいよね？オンエア出来ないんだし」と言わんばかりに懐かしのドラマばかりが流れている。
「どうせ当選発表の時はみんな死んでるよね？」と言わんばかりにハロウィンジャンボ宝くじの発売が前倒しされた。

高級ウェディングプランの予約が殺到して、かなり早めの成人式が各地で開催された。
数日前からテレビCMが減ってきた。ACジャパンのCMばかり流れている。
「どうせ世界が終わるなら、お金かけて広告出さなくてもいいよね？」ってことだろうか。
狂ってる。と思いつつ、実は少しだけ怖くなりはじめていた。
本当に世界が終わってしまうのだろうか。
もしそうなら、俺はこのままでいいのか？
『あの時』のことも、このままでいいのか？

「何してんの？」
急に庭の方から声が聞こえてギョッとする。
網戸にしていた窓から部屋を覗き込んでいたのは、幼馴染の明（メイ）だった。