そうだ、内側へ行こう! <GO INSIDE!>

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 三人は覚悟を決め、歯を食いしばり目を見開いていたが、その目前で海獣はスッと海の中へと消えていった。 「・・・俺たちって、助かったの?」恐怖で顔が硬直した竹上が口を開く。 「かもね・・・」梅本も海面で身体を硬直させたまま、弱々しく声だけを発した。  やがてそんな三人の近くへと小舟が近づいてきたが、小舟を操る老人の顔には、憐れむような「トホホ・・・」の文字が浮かび上がっていた。 ・・・・・  シャワーと着替えを済ませた三人は、今、老人が経営する小さなレストランの席に座っている。目の前にはオランダの魚料理、キベリング(タラのフライ)をはじめとした小皿がいくつか並んでいる。  料理を食べながら老人の話を聞いて、三人は自らの身に起こったことを理解した・・・その村では、少年が大人の男性へと成る時に漁村で飼っている巨大なリヴァイアサンに飲み込まれ、生きて出てくる必要があるという。いわゆる通過儀礼(イニシエーション)なのだろう。  ただ、その村のリヴァイアサンは音に敏感で、叫ぶと逃げる大人しい性格のようだった。だから、三人は飲み込まれずに済んだ訳だ。イニシエーションという意味合いでは、三人は臆病者たちというレッテルを貼られてしまったのだが・・・。
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