元恋人

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「宇島くん、好きです。その、付き合ってくれないかな?」  意を決して人生で初めての告白をした当時中学三年生の雨峯は、誰に対しても柔らかな姿勢で受け答えをするその穏やかな同級生に心を奪われていた。  雨峯が通っていたのは従者を目指す者が入学する専用の学校であったが、その中でも彼は誰よりも秀でた才能を持っており、誰から見ても模範的に見えるその奥ゆかしい態度で多くの生徒から注目を集めている人だった。 「小野さん、ありがとう。好きという感情がまだ分からないけれど、そんな僕で良ければお願いします」 「!!! ぜ、全然!! そんなの、これから知ってもらえれば……!!! ほ、ほんとにいいのっ!?」  嬉しさのあまり、声が上擦っていた。 「うん、本当だよ。ありがとう。好きと言ってもらえて嬉しいよ。宜しくね」 「う、うん!!! 私の方こそありがとう!!! よ、宜しくお願いします!」  それから雨峯は兜悟朗と付き合う事になった。毎日のように足取りが軽かったのを今でも覚えている。  初恋が叶ったあの瞬間、とても幸せで毎日のように彼の事を考えていた。  学校で会えれば兜悟朗のそばに行き、周りから羨ましがれる独特な視線は照れ臭かったが誇らしかった。兜悟朗も裏表などが一切なく、本気で雨峯を恋人として大事にしてくれているのが伝わっていた。 ―――――――だが、所詮はそれ止まりだったのだ。
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