ケイヤとコウヤ

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 違和感。違和感がなかったかと聞かれれば、どうだろう。確かに嘘だと確信していたのだ、最初は。  起きたら僕はケイヤになっていて、ケイヤだったはずの兄が僕であるはずのコウヤになっていた。でも濁流に飲み込まれたあのとき、僕が頭を強打して、どこかおかしくなってしまったのだと彼に言われれば、そうかもしれないと思わざるを得なかった。  婆やは彼が言うがままに、僕らのことを信じた。いや、信じたと言うより、そんな余白もないくらいさぞ当たり前のように、僕をケイヤで彼をコウヤだとした。"信じる"も"認める"も、理性一枚介さずに受け入れた。それほどまでに僕と彼は似ている。  違和感。コウヤなる者は、口数が減った。必要最低限のことしか話さない。前はもっと明るく、未来に向けての夢想やくだらない虚構に大いに笑いあったものだ。しかしあの日から、人が変わってしまったのか、彼は氷水を浴びたように冷たくなった。一人で出かけることも多くなっていった。
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