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復讐を誓ってから、僕と片割れはすぐに家を出て、別々に暮らした。僕の方は生贄となる残り時間を復讐の計画を立てることに専念するためだったが、あいつは村の一人娘と夫婦になったのだ。
許せなかった。僕を差し置いて幸せになろうとする様が。だから僕も大して好きでもない女と夫婦になり、あいつより先に子を為した。幸せなんて程遠い、地獄のような日々を送った。
25歳になるまでの5年間は苦痛でしかなかった。愛してもいない妻、可愛くもない我が子、憎き兄弟。日に日にやつれていく僕を、片割れがどんな思いで見ていたのか定かではない。少しボケた婆やだけが「可哀想だ」と嘆いてくれた。
祭りが執り行われる日が決定した。雨水の日、人々が天に雨を乞う日。同時に、僕もあいつも地獄に堕ちる。
家族のことなどどうでもいい。父のことも母のことも、今となっては憎い存在でしかない。よくもあんなクズと一緒に、こんな狂った村に産み落としてくれたものだ。世界の何もかもを恨んでいた。
生贄となる人間は白装束に身を包み、一度入ったら出られないとされている森へと入る。水も食料も持たず、ただ突き進むのだ。そうして森の中にあるとされる社の前で、命果てるまでひたすらに祈り続ける。帰ってくることは許されない。
僕だけが死ぬなんて冗談じゃない。僕が死ぬならあいつも死ぬのだ。森に入る直前に気絶させ、二人で森に入り、二人で生贄となるのだ。それが僕からあいつへの復讐であり、村への忠誠心だ。
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