ケイヤとコウヤ

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 12歳となった僕とコウヤは、二人でかくれんぼをしていた。その頃、村では干ばつがひどく、米も野菜も採れぬ不作が続いていた。  鬼となったコウヤから隠れるために、僕は村長の家の影に隠れた。コウヤが数を数えているうちから少し離れたところだから見つかるまでしばらく持つだろう。  そうして身を潜めていたとき、家の中から村長と村人の声が聞こえてきた。 「雨が降らぬ。このままでは村人は全員干からびて死んでしまう」 「しばらくの辛抱だ。水神家の嫡男が25になれば、祭典を執り行える」  内容は少しばかり難しいものだったが、以前婆やに聞いたものだと理解することはできた。25歳になったら、僕は生贄となる。村のために身を捧げるのだ。 「嫡男?おいおい、そりゃあのボケた婆さんが言っているだけだろう。水神家は二人男子がいる。その場合は嫡男は継嗣のために残しておかなければならない。だから生贄は末子でなければならぬ」 「そうか。前回は一人子だったからな。此度は末のコウヤでなければならなかったな」  耳を疑った。婆やの言っていたことと異なる。コウヤが生贄?長男であるが故に僕は生き残るのか。  身体が一気に冷えた。なんとかしてコウヤを守らなければ。しかし今さら仕来りを変えるわけにもいかない。どうすれば、どうすればコウヤを守れるか。  何ヶ月も何ヶ月も考えた。寝る間を惜しんで、なんとかしてコウヤを逃がす方法を。頭を悩ませて数ヶ月経ったとき、二人して洪水に巻き込まれてしまった。  幸いにも二人とも命拾いし、先に目を覚ましたのは僕だった。  ああ、これだ、と思った。別にコウヤを逃がす必要なんてない。だって僕がコウヤになればいいだけの話だ。愛する弟の未来は、兄である僕が守らなければ。 「僕がコウヤ。彼は僕の兄、兄のケイヤだ」
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