1人が本棚に入れています
本棚に追加
事の発端は今年の初詣でだった。
賽銭を投げ終わり、おみくじを買うための行列に並びなおした時に、恋人の郁美がふとこんなことを言った。
「そろそろ世の中も動き始めたしさ、次の連休は、どこかに旅行しようよ」
僕よりはるかに背の低い郁美が見せる上目遣いの視線は可愛い。
こんな子とお付き合いしている僕は、なんて幸せ者なんだろう。
そんなことを考えながら、気軽に了解したのが最初のミステイク。
「次の連休っていつ?」
小吉だったおみくじを専用の場所に括りつけながら、僕は大吉を引いておみくじマウント魔と化した郁美に尋ねた。
「そりゃ、G.Wでしょ」
「それはまたなかなかハードな戦いになるね」
「大丈夫、私大吉引いたから。どんと任せて」
「へいへい、よろしく」
郁美が小さい体を精一杯そらせて胸を叩く真似をして見せるのを、僕は微笑ましく見ていたわけだが、これが次のミステイクと言って良いかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!